保守とレトロフューチャーと異世界転生

ようやく感染者数や重症者数も減り始め、コロナ禍もようやく落ち着きを見せた感があるが、デルタ株の次はイータ株の話も聞くし、結局インフルエンザ同様毎年流行って数千人亡くなる系統の病気として定着し、「まあそういうもんだよね」という感じでなし崩し的に自粛要請もなくなっていくのだろう。今日は台風が太平洋ベルトを横断し、和歌山県では竜巻の被害も出たそうだが、私が住む埼玉は平和なものであった。

 

さて、デュア・リパの公式チャンネルから非常にいいMVが出ていたので紹介したい。

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この曲自体は2020年に発表された「FUTURE NOSTALGIA」に収録されている。このアルバムは私もitunesで購入し、当時間違いなく売れると思っていたがやはりとんでもない売れ方をした。

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ちなみにアニメーションはこちらで手掛けたという。

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どこの制作会社かと思ったら、どうやら個人製作に近い小さなプロジェクトのようだ。個人でもアニメを作れる時代になったわけだが、小さな制作スタジオにいきなり超有名アーティストからオファーが来るとは、中々すごい時代だと思う。

 

昔からsynthwaveなどのレトロ風楽曲のブームはあったが、メジャーなアーティストもそれを取り入れるようになって、いよいよサブカルチャーからメインカルチャーに進出してきた感がある。テクノロジーが進歩した現代だからこそアナログの良さが認識されているのかもしれない。90年代以前を知らない若い世代が古いものに価値を見出しているのは、中々皮肉ではある。これについては後半で詳しく述べたい。

ちなみに、これを洋楽を全く知らない職場の同僚に見せたら、最初「どうせ売れてないアーティストでしょ」とか言っていて、単に無知なだけでなく「これが実は超大物アーティストだった場合赤っ恥をかくことが想像できない」という二重の意味で頭が悪いと感じてしまった。

 

近いうちに自民党総裁選が行われるというが、総裁を決めるのが国会議員である以上国民としては生暖かい目で見守るしかないかなぁという状態である。この人も度々炎上しているようだが、彼に噛みついている人は自分が養分になっていると早く気付いて欲しいものだ。

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私の本音を言うと靖国問題とかどうでもいいし、「日本も中国も何十年も前のことで未だに争ってて成長しないな」と思っている。そもそも本当に日本が好きなら、中国を叩くより日本を良くする方が先で、そのために優秀な人材になって日本のためにバリバリ働くべきだと思うのだが、何故かそうならないらしい。

 

社会は右翼と左翼、保守と革新に二分できるほどシンプルではない。本来ならば思想は人の数ほど存在する。例えば保守と言っても何を保守するか、どうやって保守するかが重要である。これについて宮台真司が「記憶」をキーワードにしていたのが腑に落ちた。

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本来保守派には保守すべき過去の記憶があり、改革派も人を助けた喜びという記憶が根底にある。それを考慮すると中高年以上に保守派が多いのも納得できる。

その点新自由主義はいわば「記憶なき保守」であり、守るべきものがない状態で保守を実践した結果、多くの社会問題が発生した。その反動で、若い世代を中心にリベラルな思想が広まっている。

現代は社会の変化が激しい分ジェネレーションギャップも拡大していると思われるが、これから20年30年もすれば世代が大きく入れ替わり、社会はかなりリベラル寄りに変化するのではないかと予想している。

 

その一方で、上記の通り昔を知らないはずの若者が懐古趣味に走っているのは中々興味深い現象ではある。私の愛車のベスパもそういう性質を含んでいるし、懐古趣味自体嫌いではない。懐古趣味、とりわけレトロフューチャーは「昔描いた未来像と、思ったよりも良くならなかった現実を比較し、郷愁に浸る」という文脈で書かれがちである。

要するに「俺たちが思い描いた未来はこんなんじゃなかった!80年代に思い描いた、あの希望に満ちた未来に帰りたい(?)」ということだ。

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この辺は専門家や評論家からも様々な意見が出ており中々難しいのだが、現代に生きながら昔の理想を追い求めるというのは、個人的には現実逃避の一種だと考えている。

ただこれも記憶が重要なポイントだと考える。「保守・郷愁の対象」としてとらえる中高年以上に対し、80年代の記憶がない30歳以下の世代にとっては単に「見たことがない、面白そうなもの」として映っており、あくまで趣味の一環に過ぎないのだろう。

だがいずれにしろ現実とは違う世界に興味を持っているという点では共通している。その点は異世界転生もののブームとも共通するかもしれない。懐古趣味と異世界転生小説が繋がっているとしたら、中々面白いことだと思う。 

スマホは利便性をもたらしたが、同時に人間関係の束縛や劣等感をもたらし、承認欲求を満たすゲームを強いられるようになった。そんなテクノロジーに対する否定の意味合いもあるのだと思う。結局人間の欲望は無限大で、何かが解決されても新たな問題が生まれるもぐら叩き状態からは抜け出せない。

 

若い世代が現代を肯定できず、未来に希望を持てないとしたら非常に残念なことだ。私も学生時代は、就職したらもう自由はなくなるものだと思っていた。実際適応障害で休職するまでは辛かったが、今は幸か不幸か出世することもなく、割と自由に暮らせている。車とバイクがある分学生時代よりも楽しめているかもしれない。

生きてさえいればどこでチャンスが巡ってくるか分からない。若い世代には希望を捨てずに生きて欲しいと思う。適当に書き始めた今回の記事が、こんな形でまとまるとは思わなかった。